MIB メン・イン・バカ
MIB

 国籍 アメリカ
 製作 2008
 販売 アルバトロス


 屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……


 あの超有名なコメディ映画、MIB(メン・イン・ブラック)のパロディ映画らしいです。以下に本家のパッケージを。

MIB(ブラック)


 さて今作ですが、割と豪華な声優さんによるガバガバ吹替えシリーズです。所々原文と関係のないことを吹き替えでは喋っています。レンタル版を音声は吹き替えで、字幕を表示したままで視聴しました。Amazon先生のあらすじからどうぞ。

【あらすじ】
大ヒット作『MIB3 メン・イン・ブラック3』をコメディ要素たっぷりに大胆アレンジした本作、『MIB メン・イン・バカ』
声優の古谷徹(『ガンダム』アムロ役)の吹き替えにも大注目!!

(中略)

静かな湖畔の森の陰、コテージでのんびりと週末を過ごしにきたレイチェルら4人。
一方、その頃はるか宇宙のかなたでは、ある宇宙基地がくだらない不慮の事故で爆発していた。
政府諜報部に入った情報によれば、良くわからないがその爆発によって"何か"が地球に墜落したらしい。
森に不穏な空気を感じた4人は、まさにその緑色に光る"何か"を見つける…。事件を解決すべくFBIから派遣されたのは、2人の無能捜査官。
彼らがさんざん道に迷った挙げ句にコテージにたどり着いた時には、レイチェルの体が奇妙な"何か"に蝕まれ始めていた。
人類最大の危機が近づくも、遅々として進まない捜査。果たして彼らの運命は!?
その"何か"とは一体?地球の運命は、誠に残念な2人に委ねられた!

ストーリー……E
キャラクター…D
設定……………D
ギャグ度………E

総合……………E
おすすめ度……F

初心者おすすめ度 F


 かつて、これ以上の内容詐欺があっただろうか、いやない(反語)





【以下、ネタバレ注意!】





 さてレビューに入る前に、皆さんにいいお知らせ悪いお知らせがあります。

 
 まずはいいお知らせから。例えば『60年後…』『バイオハザードX』『トランスモーファー』『ターミネーターX』等のように、B級映画には原作と全く関係ない作品にそのパクリタイトルを付ける、パッケージ詐欺やタイトル詐欺の作品が数多くあります。一方で『最終絶叫計画』という作品のように、有名映画のパロディ物作品も存在します。

 もちろん前者と後者には大きな違いがありますよね。前者の映画は、内容が原作と全く関係ありませんが、後者は原作ファンなら楽しめるものが多いです。もちろん後者だけを選んで見たいものですが、残念なことにこの両者の違いを見分けるのは、簡単なことではありません。

 しかしこれらの違いを、簡単に見分ける方法があるのです。それはずばり、パッケージの裏面やAmazonに記載されている内容紹介文を見ることです。

 パロディもの映画には、ほぼ確実に『〇〇(原作名)をパロディ!』『〇〇をアレンジ!』のような煽り文句が付いているのに対し、詐欺映画の紹介分にはまず間違いなく原作のパロディ』という表現は出てきません。せいぜい原作名が出てきても『「ターミネーター」のようなスリル感!』というふうに、遠まわしな表現の煽り文だけです。まあ、パロディしてないのですから当然のことですね。

 この『詐欺映画に原作パロディ表記なしの法則』さえ知っていれば、あなたも明日から下らないB級詐欺映画の餌食になることはないでしょう。是非活用してください。


 そして悪い知らせですが、この法則、敗れ去りました

 今作は、Amazonの内容紹介文にきっちりと『MIBをコメディ要素たっぷりに大胆アレンジ!』とあったため、私は上記の法則の通り「これはMIBのパロディものなんだな」と思って借りてきましたが、これがもうMIBのパロ物でないどころか、共通点は『エイリアンが出てくること』くらいしかないというとんでもないものでした。

 ふ、ふざけるなよ……! 訴訟だろうが……タイトル詐欺のうちはまだしも、原作名を口にしたら……訴訟だろうがっ……! 訴訟じゃねえのかよっ……!

   ちなみにパッケージ裏を確認したところ、確かにそちらには『MIBのパロディ』というようなニュアンスの記載はありませんでしたが、パッケージの『ヤツらが帰ってきた?! いや、人違いだ!』というパロ物を思わせるフレーズと、Amazonの紹介文に完全に騙されました。おのれAmazon


 というわけで、この映画はMIBの要素は皆無です。出てくるエイリアンは1種類だけですし、被害者たちの記憶を消そうとピカーなんてシーンは毛頭ありません。そもそも原題がSOUNDSとMIB全く関係ないです。

 さらに今作は、これにパッケージ詐欺まで加わります。パケ絵に映っているおバカそうな武器は一切出てきませんし、そもそも相棒らしき女性は本部に呼び戻されたとかで、中盤からはずっと主人公一人だけになる上、印象的な黒いスーツを脱いでしまうので、パッケージから読み取れる正しい要素は舞台が地球なことくらいです。
 ↓もう一度詐欺まみれ のパッケージをどうぞ
MIB


 こんな内容なので、この映画をMIBのパロディとして見ようとする人には、絶対におススメできません。これを見るくらいならMIBをもう一度見ましょう。


 では一体、この映画は誰にならおススメできるのか……私も必死に考えた結果、いくつか候補が挙がりました。

①SFが見たい方
②コメディを見たい方
③吹き替えを楽しみたい方
④MIBファン


 先ほど述べた通り④MIBファンは論外として、その他には3つほど可能性を考えました。以下、それぞれの観点からの評価を書いてゆきます。

①SFが見たい方
 まずこの映画は、腐ってもエイリアンの侵略を描いたSFものなので、パロディがどうとか気にせずに単なるSFものとして見れば楽しめるのではないか? というのが一つ目の見方です。

 答えはNOです。

 なぜなら、この映画は単純に内容が面白くないという、深い闇を抱えているからです。

 まずこの映画の前半ですが『空から落ちてきた謎の物体に接触した一人が、体内にそのやばい物体を取り込んでしまったので、彼女を救うためによく分からない装置を持ってきた』というだけの展開が終わるまでに、丸々50分以上かかります。こんなの20分もあれば終わりそうですが。

 ではなぜこんなに長引いているのかというと、それは所々に無意味なギャグがこれでもかというくらいに詰め込まれ、本筋の話が全然進まないからなのです!

 さらにこの映画、敵のエイリアンの姿が見れるのは、本編終了間際、彼らを撃滅させる際の一瞬のみ。その間30秒もありません。それまでのエイリアンと闘争しているシーンは、カメラにエイリアンの姿は一切映りません

 そして後半は『その装置をエイリアンに奪われたけど何とか取り返して起動してエイリアンやっつけたと思ったらやっつけてなかった』という丸投げエンド。続編でも作る気なんでしょうか? やめてください。

 以上この映画、SF映画としては最低レベルの出来なので、おススメはしません。


②コメディを見たい方
 この映画は腐ってもコメディ映画ですので、パロディがどうとか気にせずに単なるコメディとして見れば楽しめるのではないか? というのが二つ目の見方です。

 答えはNOです。

 なぜならこの映画、ギャグのセンスが壊滅的なので、コメディシーンが全く面白くないからです。

 しかもただ面白くないだけでなく、その非常に寒いコメディシーンが本筋であるストーリーをぶった切り、もう嫌というほど挿入されてくるので、とても見ていられるものではありません。

 例えば、主人公が出発する前、部下に買いに行かせたチョコレートの種類が違うと延々駄々をこねるシーンや、車が故障して直してもらう際、代金のことで長々しい問答をしているシーン、エイリアンの正体について、的外れな考察を垂れ流されるシーンなど、もう見れたものではありません。

 くすりと来たシーンはほぼなし、笑いが起きたシーンは皆無というまさに酷い出来で、逆に「どうしてここまで面白くなくできるのだろう」と感心してしまいます。コメディ映画としても全くおススメできません。


③吹き替えを楽しみたい方
 本編の内容は破滅しているものの、今作の吹き替えには、主人公に古谷徹(機動戦士ガンダム アムロ役)さんをはじめとした結構豪華な声優さんが揃っています。かつ所々原文と無関係なことを喋っているので、吹き替えで遊んでいるノリだけなら楽しめるのではないか? というのが三つ目の見方です。

 答えはNOです。

 その理由は、声優さんは迫真の演技で頑張ってくれていますが、そもそもセリフ自体が全く面白くないからです。

 例えば、登場人物の名前を間違えて本人に訂正させるというネタを繰り返し、「新婚さんいらっしゃーいの放送が始まる!」のような寒いギャグを挟むなど、わざわざ吹き替えで改変しない方がマシなレベルのギャグしかありません。

 また古谷さんを起用しているのをいいことに「親父にもぶたれたことないのに!」といったガンダムネタも盛り込んできたりしていましたが、セリフを入れるタイミングを外し過ぎていてガンダム厨の私ですら失笑という酷い有様。

 以上、狙って面白くしようとしている吹き替えすら面白くないので、もう何も褒められる点がありません。


 また誤解のないように言っておきますが、吹き替えが面白くない要因は声優さんに喋らせている内容が面白くないせいで、声優さんの演技自体はかなり迫真でした。

 声優さんたちがこの面白くない内容を何とか面白くしようと頑張ってくれていますが、「面白いセリフを面白く話す」ことについては一流の彼らも、「面白くないセリフを面白く話す」ことは無理です。それができるのは人間ではありません。

 また「声優さんが迫真の演技をしているのだけでも見たい!」 という考えの方にならおススメできるかとも考えたのですが、声優さんの迫真の演技が見たいのなら、その方が出ている名作を見れば十分です。こんな映画に足を踏み入れる必要は皆無です。



 総評ですが、字幕で見ても吹き替えで見ても、壊滅的なコメディセンスに頭を悩まされる映画です。映画本編に評価できる点は皆無で、声優さんの迫真の演技も、魅力が全くないセリフ内容が見事に殺しています。これを借りるために100円出すくらいなら、おとなしくメン・イン・ブラックを見返すか、その100円で缶コーヒーでも買ってください。間違いなくこれを見るより幸せな気分になれます。