ザ・スネーク

 最近肌寒くなってきまして、夜なんてもう半袖では過ごせなくなってきましたね。でも私の部屋は何故か熱を持ったまま……未だに昼はエアコンつけっぱの不健康生活です。

 さて、そんなどうでもよいことは放っておいて、今回はこちらの映画です。

へび

 最近モンスター映画、特にサメが(私の中で)流行っていますが、今回は趣向を変えてヘビです。

 国籍 アメリカ
 製作 2008
 販売 ミッドシップ

 製作に皆さんよく知るUNIVERSALが関わっていますが、別に超有名俳優が出ているわけでもなければ金があるわけでもありません。(多分)あくまで純粋なB級映画です。Amazon先生のあらすじからどうぞ。


【あらすじ】
西部の街に現れた巨大ヘビと人間の壮絶な死闘を描いたモンスター・パニック・アクション!無法者たちが支配する法も秩序もない荒野の宿場町。ガンマンとしてその名を轟かせるビル・ロングリーは、旧友を殺した無法者のジェシーを捜しにこの町にやってきた。その途中で、妙な噂を耳にする。何千匹もの蛇の大群が、人々を襲い周辺の町を次々と破壊しているというのだ。いずれこの町にも蛇の大群が押し寄せると察したビルは…。

ストーリー……B
ヘビの質………C
キャラクター…A
設定……………C

総合……………B+
おすすめ度……A

初心者おすすめ度 C


 粗いCGを見慣れていない方にはあまりおすすめできませんが、個人的にはB級映画を見慣れている方にすごく見てほしい作品です。





【以下、ネタバレ注意!】





 久しぶりに、大当たりを引けました。

 何から書けばいいのか迷いますが、まずは一言。この映画、面白いです。裏面のCG丸出しのスクリーンショットを見て全く期待してなかったのですが、想像以上に面白かったです。まああまりハードルを上げてもあれなので、この辺にしておきましょう。



 とは言ってもこの映画、もちろん悪い点もあるわけなので、まずはそちらからいきましょう。


 まず最初に。この映画のヘビのCGの質についてですが、正直CG感丸出しです。しかし良く動くので、B級映画としては可もなく不可もなく、というようなレベルでした。粗いCGを見慣れた方なら、特に問題はないでしょう。


 また上にネタバレ注意と書いていますが、何のことはありません。この映画、ストーリーはスッカスカです。簡単に書けばこの映画は『西部開拓時代のアメリカの寂れた町にヘビの大群がやってきたので、皆で力を合わせてやっつけました』という内容です。捻りもなければ、衝撃のどんでん返し的なシーンもありません。ただただシンプルに、ヘビの大群と戦って勝つだけの映画です。


 そしてこの映画、そんなシンプルな内容でありながら、この襲ってくるヘビの大群が一体なんなのかの説明はものの一切ありません気が付くとヘビがいっぱいいて、いつの間にかでっかい親玉も出てきて、こやつらが何だったのか、全く分からないままこの映画は終わります。

 要するにこの映画ですが、ストーリー的にヘビを出す必要が全くありません。『ヘビの大群』を『ギャング団』に置き換えても話として全然成り立つくらいに、西部劇との関連性が皆無です。設定厨の私としては、こればっかりはいただけません。

 
 さらに展開もご都合主義満載です。大群のヘビはご丁寧にも爆発地点に大集合してくれますし、小ヘビの大群が爆死するまで親玉の大ヘビは姿も見せずにおとなしく待機してくれるという優しさ。何と空気の読めるヘビでしょう。


 とまあこの映画、悪い点をまとめると結局はガバッた設定に集約されます。

 「でもその割に設定の評価Cやん?」と思われたかもしれませんが、これにはもちろん訳が……それは、この映画の最も救われている点が、ヘビの大群と戦う舞台を西部劇にしたことだからなのです。


 もしこの映画の舞台が現代だったならば、いくら田舎の町だったとしても、車で逃げるなり通信で助けを呼ぶなり、対処する方法はいくらでもあります。そうなるとモンスター映画独特の緊張感は出せませんし、何よりコンクリ道路や近代建築物にヘビの大群という、想像するだけでもチープなことこの上ない映像に仕上がってしまいます。

 逆に時代設定が前過ぎたとするならば、今度はヘビ軍団に対抗できる手段がありません。まさかマチェットやライフルだけで対抗するわけにはいきませんので、そうなるとこの映画はヘビと戦う映画というより、ヘビから逃げるパニック物になっていたかもしれません。

 ところが舞台設定を西部開拓時代の寂れた片田舎にすれば、『馬がヘビに噛まれて移動手段がなくなった』という設定を付け加えるだけで町全体を巨大な密室にすることができ、かつダイナマイトがあるので、対抗手段的にも上手くやれば勝てそうなギリギリのレベルに抑えることができます。 

   また舞台が西部開拓時代のため、砂にまみれた木造建築の建物のおかげでヘビが映像的に映えています。これがコンクリの上だったなると、先ほども述べたようにもっとチープになっていたでしょう。

 つまりこの映画は(意図してのことかは分かりませんが)、『ヘビの大群』と『西部開拓時代』という設定同士が大変相性良く噛みあっているのです。この点を持って、本来ならDレベルの設定評価をCに引き上げました。


 そしてこの映画、シンプルなストーリーながら非常にテンポが良く、(ヘビのCGが気になる方は別として)全く飽きることなく見ていられます。

 さらにストーリーについて述べると、この映画は西部劇として普通に面白いというプラス要素もあります。ヘビ軍団が攻めてくるまでは、主人公は友人の仇を討つガンマンとして描かれるわけですが、無法者とのやり取りの雰囲気が非常によくできていました。



 しかしこれらも、この映画最大の魅力とは言えません。では一体何なのかというと、それは紛れもなくキャラクターたちの魅力あるセリフ回しです。


 この映画は、B級映画の中でもかなりキャラクターが立っています。特に主人公はなかなか魅力的な人物だと言えるでしょう。西部ガンマンに似合うハードボイルドな性格であり、悪役には一貫して情け容赦をかけませんし、味方でも見捨てるべき時は迷わず見捨てる非情さがあります。一方友人の娘や仲間のことは常に気に掛ける優しさも持っており、人間臭い部分もしっかりと描かれている、という、まさにこの手の映画に理想的なキャラクターに仕上がっています。

 他のキャラクターも良い人悪い人がしっかりと分かれており、また女性も何人か出てきますが、皆気品さがあってギャーギャーわめいたりということもないので、安心して物語を楽しめます。

 要するにこの映画のキャラクターたちは、最後まで行動が一貫していて潔いのです。悪役もしっかり悪役に徹してくれるためウザさはなく、むしろ主人公たちとのやり取りの中で上手く他のキャラクターを引き立たせていました。


 またこの映画ではいくつかコメディシーンも描かれるのですが、これの完成度がかなり高い。話の本筋を邪魔しない程度にスパイス的な要素として上手く組み込まれ、全くクドく感じないどころか、むしろ西部劇という舞台やキャラクターたちの魅力をいっそう引き出せていたように感じました。


 そして最後に、コメディシーンでない普通のシーンでも、キャラクター同士の会話が魅力的だったことを挙げておきます。「どこどこの、このセリフが良かった!」というよりは、作品全体を通して一つ一つのセリフ回しが上手く、西部劇という舞台の雰囲気とうまくマッチしていた、というような印象でした。

 つまりこの映画は、特定のキャラクターが魅力的というよりは、キャラクター同士のやり取りや関係性に魅力を感じられる映画だと言えると思います。



 総評ですが、設定に粗も目立つものの、全体的に設定同士が上手く噛みあい、また上手なセリフ回しによる魅力的なキャラクターのおかげでかなりの完成度を誇る作品に仕上がっていると思います。モンスター映画というよりは、バリバリの西部劇にモンスター(ヘビ)を入れてみた、という要素が強いと思うので、モンスターや大量発生パニックを期待している方よりは、むしろ作品全体の雰囲気を楽しめる方向けにおススメしたい作品です。


 唯一一点だけ、ヘビのCGの質ですが、良くも悪くもB級映画として標準レベルの出来になっているため、CGの粗さがどうしても気になる方は、視聴を控えられた方が良いかと思われます。しかし、粗いCG見慣れたものなB級映画好きの方には、是非一度見ていただきたい作品でした。

 まあ、あまり高い期待度で見られても期待外れになるでしょうから、「名作映画を借りるついでに」というような気軽な気持ちで、レンタルショップに行ってみてください。 おススメです。